ソロモンの偽証　前篇・事件

主演：藤野涼子
出演：
板垣瑞生　石井杏奈　清水尋也　富田望生　前田航基　望月 歩
西畑澪花　若林時英　西村成忠　加藤幹夫　石川新太
佐々木蔵之介　夏川結衣　永作博美　黒木 華　田畑智子　松重 豊　小日向文世　尾野真千子
原作：宮部みゆき「ソロモンの偽証」（新潮文庫刊）
監督：成島 出
脚本：真辺克彦
音楽：安川午朗
撮影：藤澤順一
照明：金沢正夫
美術：西村貴志
録音：藤本賢一
編集：三條知生
企画・配給：松竹

【ストーリー】

大雪が降ったクリスマスの朝、藤野涼子（藤野涼子）と野田健一（前田航基）は彼女らの中学校の終業式に向かう途中、校庭でクラスメートである柏木卓也（望月歩）の死体を発見した。警察は彼の死を自殺と断定したが、藤野涼子のもとに、届いた1通の告発状が届く。

「柏木君は自殺ではありません。本当は殺されたのです。」

告発状には、犯人が問題児・大出俊次（清水尋也）を含む3人であると書かれていた。涼子の父で警察の藤野剛（佐々木蔵之介）が学校と相談した結果、校長・津崎正男（小日向文世）の判断により告発状は黙殺されることに。

しかし、テレビ局記者の茂木悦男（田中壮太郎）のもとに、同じ告発状が同封された封書が届く。しかもその封書には、柏木の担任・森内恵美子（黒木華）が告発状を破り捨てたと書かれていた。テレビでその事実が報道されると、生徒や保護者たちの間に波紋が広がる。

報道後にクラスメートの浅井松子（富田望生）が交通事故で亡くなり、また大出俊次の家は火事で焼失する。学校も警察も信じられなくなった涼子は、柏木の小学校時代の同級生・神原和彦（板垣瑞生）との出会いを通じて、校内裁判を行うことを思いつく。そして彼女たちは、事件の調査へと乗り出していく。

誰が告発状を書いたのか？　嘘つきは誰なのか？
「事件」の前編が今、幕をあける。

【見どころ】

宮部みゆきが構想に１５年、執筆に９年をかけ、彼女の最高傑作にして集大成と言われている長編ヒューマンミステリー、『ソロモンの偽証』。この傑作を映画化するために国内主要映画賞３０冠の『八日目の蝉』チームが再結成し、また約１万人もの候補者から３３人の子役たちが選び抜かれた。この映画のために集まった精鋭たちによって、原作の雰囲気をそのままに、柏木の死をきっかけに狂っていく生徒たちや教師たちの心情を重々しく描いている。しだいに物語は「学校裁判」という前代未聞の展開をみせ、観客を魅きこんでいく。

この映画では、作品全体が重々しい雰囲気に包まれている。主人公役の藤野涼子ら中学生たちのフレッシュながらも芯のある演技と、佐々木蔵之介らベテラン俳優たちの成熟した安定感のある演技が組み合わさり、劇場に今まで経験をしたことがないような緊張感が生み出される。この雰囲気は、原作を既読の観客も未読の観客も存分に楽しめるだろう。

また劇中ではいじめや家庭内暴力、マスコミの過激報道など、いくつもの社会問題を扱っている。そんな「大人」たちの問題に「子供」たちが疑問を抱き立ち向かっていく様子には、考えさせられることが多いだろう。

誰が、なぜ、嘘をついているのか。「事件」の前編は多くの謎を残したまま幕を閉じ、「裁判」の後編への期待をよりいっそう加速させる。

Text by EISUKE